チュートリアル講演
第9回JAMITチュートリアル講演会(教育委員会企画)
「Beyond Deep Learning」
コニカミノルタ科学技術振興財団 JAMITハンズオンセミナー連携企画
7月24日(水) 13:20-16:10
メイン会場:レセプションホール1(2階)
座長:
中田 典生(東京慈恵会医科大学),小田 昌宏(名古屋大学)
[概要]
深層学習を利用した論文が数多く報告されている.今後研究を進めるためには,最新の深層学習の動向を把握するだけではなく,過去との差異を明確にし,データ収集や実行環境の効率化などの観点が必要である.今回のJAMITチュートリアルは,大会期間中に会場で開催される「コニカミノルタ科学技術振興財団 JAMITハンズオンセミナー」と一部連携して,医用画像における深層学習の実際について集中的に講演を企画した.講演1では,人工ニューラルネットワーク利用した画像処理の過去から現在,そして,将来への展望を,国際的な観点から幅広く講演いただく.講演2では,スパコンや大容量ストレージが必須となる研究を実行するための環境としてのクラウドサービスの実際とその見積について,講演いただく.講演3では,正解データの作成,プログラム構築,その評価,論文化と,ともすれば一人ですべてをワンオペのように解決できる深層学習の研究状況において,研究者が共同研究を行う新たな環境について講演いただく.
講演1
演者:
鈴木 賢治(東京工業大学/イリノイ工科大学)
演題名:
世間の流行に左右されない深層学習所感
[抄録]
深層学習が革新的な技術として世界的な話題となり,学会,産業界,そして世間を騒がしている.革新的な技術分野に加わることは大変良いことである.しかしながら,世間全体がブームに踊らされている感じがあることは否めない.本講演では,24年間深層学習の研究開発を続けてきた講演者の深層学習所感について述べる.深層学習は,従来の機械学習と本質的に何が違うのか?学習には大量の症例が本当に必要か?層は深ければ深いほど良いのか?大規模計算,大規模メモリは必須か?などの疑問について,講演者独自の深層学習モデル(MTANN)の研究開発,AI支援診断や仮想画像化への応用,実用化を交えながら解説する.
講演2
演者:
平野 靖(山口大学)
演題名:
様々な大規模計算環境の得手・不得手~ 何ができて何ができない? ~
[抄録]
スパコン,PCクラスタ,クラウドコンピューティングなど,様々な大規模計算環境があり,さらに演算装置にはCPUやGPUなどいくつかの種類がある.この講演では,それぞれの計算環境・演算装置を紹介し,どのような処理をどのような計算環境で行えばよいかを解説する.また,医用画像処理の分野ではストレージ環境も重要であるため,有償のストレージ環境の概要や独自のストレージ環境を構築する際の概要などについても紹介する.
講演3
演者:
花岡 昇平(東京大学)
演題名:
医師が取り組んだ深層学習:臨床からスパコンまで
[抄録]
講演者は放射線科診断専門医であり,KerasやTensorflowを扱う深層学習の研究者でもある.その立場から,(1) 今の医用画像処理において深層学習が与えたショック,(2) 臨床医が今考えていること,(3) 医用画像工学者の「中抜き」の危険性,そして(4) これからの工学者と医学者の役割分担と競争,について私見を述べさせていただければと考えている.(1)では深層学習が工学者の職人芸を奪った,いわば「産業革命」となったのではないか,という観点から歴史をおさらいする.(2)では幾人かの深層学習を使いこなして業績を上げつつある放射線科医を紹介し,また彼らにとって律速段階がなにになっているかを提示したい.特にデータ収集や正解入力の実際について例示するつもりである.(3)は私がいま焦っているところでもあるが,これまでパタレコからの新アルゴリズムを医用画像というニッチに適用してご飯の種にしてきた医用画像工学者が,データと正解ラベルさえあれば研究が成り立ってしまうような時代に,どうやって生き残れるのかを論じたい.(4)は,医師がsupercomputerでpythonを扱うような時代に,工学者と医学者がどのような協働関係を作っていけるかを模索して結びとしたい.