ご挨拶
学会長ご挨拶
第38回日本医用画像工学会大会は奈良先端科学技術大学院大学教授 佐藤嘉伸大会長の運営のもとで,2019年7月24日(水)から26日(金)の3日間,奈良春日野国際フォーラムにて開催されることになりました. 一年以上前から準備をされてきた大会関係者や事務局の皆様,そして企業の業務委員会の皆様のご尽力に厚く御礼申し上げます.
医用画像工学の領域においても人工知能(Artificial Intelligence: AI)は有力な技術となるため,診断支援,画像処理,画像再構成をはじめとして多くの応用研究が盛んに行われております. 今回の大会でも「AI時代の医用画像工学」というテーマで様々なアプローチでの研究が報告されることとなりますので大変楽しみです. また,特別講演では,今のAI時代の礎を築かれた福島邦彦先生のネオコグニトロンのご講演を拝聴できるのでとても期待しております. このようなAI技術と密接な関係があるのはビッグデータですが,国立情報学研究所(National Institute of Informatics: NII)では医療ビッグデータ研究センターを立ち上げ,国家レベルで匿名化された医療画像情報を収集して医療画像ビッグデータクラウド基盤の構築を始めています. このような最新の動向もシンポジウムの中で聞くことができるようになっていますので,医用画像データとAIの今後も俯瞰できるのではないかと期待しております. また,もう一つの特別講演では奈良県立医科大学学長の細井裕司先生から,医学とまちづくりをテーマとするお話もうかがえることになっており,新しい切り口の医学のあり方のご提案とも推察され,とても興味があります.
今回の大会では佐藤嘉伸大会長のご提案で,すべての一般演題において2分程度の口頭発表(ティーザー)とポスター発表の両方を行う事になっています. 今までのJAMITとは違った形式での発表となりますが,すべての研究論文の要点を聞くことができると共に,興味ある内容はポスターでじっくり議論できるという,いいとこ取りの斬新な試みも取り入れられています.
今大会の中では,上記のような企画の他,恒例となりましたハンズオンによるAI講習会をはじめとして,盛りだくさんの企画が用意されていますので,会員の皆様には実りの大きい大会となると思っております. この大会における皆様の活発な意見交換により,医用画像工学の研究が大きく進展することを期待しています.
日本医用画像工学会
会長 尾川 浩一(法政大学)
大会長ご挨拶
第38回日本医用画像工学会(JAMIT)大会を2019年7月24~26日に奈良にて開催させていただくことになりました.大会のテーマは「AI時代の医用画像工学」としました.
AI(人工知能)は,もはや単なるブームでなく,AI以前の方法では達成できない,人間を上回りうる高性能を得るための必要不可欠な技術として定着し,さらに発展を続けています.JAMIT大会では,2016年の千葉大会の頃から,AIが大会のメイントピックとなってきました.医用画像を専門としない一般の方々からみても,今や医用画像診断は,自動運転などと並んで,AIの社会実装が最も期待される分野となっています.イメージングにおいてもAIを利用した画像再構成,超解像,モダリティ変換など,その影響力は多大です.
本大会では,AIに関する特別企画として,AIの中心技術である深層学習,その中でも,中心的方法である畳み込みニューラルネット(CNN)の基礎を与えた「ネオコグニトロン」を開発された福島邦彦先生に,特別講演をしていただきます.さらに,シンポジウムでは,国立情報学研究所と医学系各学会の連携による国家規模の医用画像ビッグデータAI解析に関するAMEDプロジェクトを取り上げます.これら歴史的研究や最新の大型プロジェクトに加えて,2017年の岐阜大会から始まり,例年,好評を博しております深層学習ハンズオンもさらに強化され,参加者一人一人がAIの基礎を勉強する場を設けています.今年は,一般演題についても,AIに関係する演題が半数に達しており,まさしく医用画像工学はAI時代に突入しています.
本学会は,医工連携,医療IT,産学連携などとも密接に関係しております.ここ奈良の地で,それらに加えて,「まちづくり」という視点を加えた「医学を基礎とするまちづくり,Medicine-Based Town (MBT) 」のプロジェクトが進行しています.このプロジェクトを推進している奈良県立医大・学長の細井裕司先生に特別講演をしていただきます.「まち」に,医科大学や医師等が持つ医学の知識・叡智を注ぎ込んで,付加価値の高いまちMBTをつくります.また,この過程が新産業創生,地方創生の原動力となります.このプロジェクトは,実際に,種々の連携体制の下,奈良県橿原市において実践されており,今後の展開が大いに期待されます.
その他の話題については,2つめのシンポジウムにおいて,医用画像を中心として,時空間多重スケール,病理,機能の多元データを統合することにより人体の総合理解を目指す,科研費・新学術領域「多元計算解剖学」の成果報告を行います.ミニシンポジウムにおいては,生きた状態を4次元でイメージングする最新のバイオ顕微鏡画像を,AIを含む情報技術によって解析し新しい生命科学の創成を目指すプロジェクトを紹介します.もう一つのミニシンポジウムでは,本学会のメイントピックの一つであるCTやMRのイメージングと深層学習を統合した新しい研究の流れに焦点を当てます.2017年岐阜大会,2018年筑波大会に引き続き,企業協賛のランチョンセミナーも企画されています.ランチョンセミナーでは研究病院の臨床現場のAI導入に関する興味深い話が聞けるものと思います.
開催場所である奈良春日野国際フォーラム甍~I・RA・KA~は,奈良公園内にあり,また,世界遺産である東大寺と春日大社の中間地点に位置しており,奈良観光にも大変便利な場所にあります.奈良において,医用画像工学の将来と共に,奈良時代の歴史にも思いを馳せていただければと思います.
第38回日本医用画像工学会大会
大会長 佐藤 嘉伸(奈良先端科学技術大学院大学)